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快適な生理用品には驚くべき歴史があった!歴史社会学者 田中ひかるさんインタビュー<第一回>【#FocusOn】

2020年02月28日更新
快適な生理用品には驚くべき歴史があった!歴史社会学者 田中ひかるさんインタビュー<第一回>【#FocusOn】

アラフォー女性ならもう何度も生理を経験していることでしょう。

経血が股の間を流れる不快感やニオイ、伝い漏れ…。

今ほど上質なショーツやナプキンがなかった時代は悩みがつきなかったことでしょう。

今はナプキンはもちろんタンポンや新しい生理用品、月経カップなども登場し驚くほど快適にリラックスして過ごせるようになっています。

しかしそこには長い女性たちの苦しみの歴史がありました。

生理用品について研究を続ける社会学者 田中ひかるさんにお話を伺った第一回です。

漫画『生理ちゃん』(KADOKAWA)や生理バッジなど、最近、生理に関する話題がメディアに頻繁に取り上げられるようになっています。

しかし、アラフォー世代には“生理”というワードは恥ずかしく隠さなければいけないようなものと感じている女性も多いのではないでしょうか。

それにはどうやら生理にまつわる社会と女性の歴史が根深く根強く関係しているようです。

『生理用品の社会史』著者 歴史社会学者 田中ひかるさんにインタビューした第一回です。

「こんな便利なもの誰が作ってくれたの?」生理用品の歴史と生理の社会学 ――田中さんは長らく社会学として生理と生理用品について研究をされていますが、何がきっかけだったのでしょうか?田中ひかるさん:単純に、「こんなに便利で快適なものを作ってくれたのは誰?」と思ったのが最初です。

――そこに興味を持つ人は多いと思うのですが、そこから研究対象とする人は珍しいのではないかと思うのですが。

田中ひかるさん:以前は特に、生理は「シモのこと」という認識が強かったですから、研究テーマとして選ぶ人も少なかったのではないでしょうか。

大学を卒業後、予備校や塾などで講師をしていたのですが、20代の終わり頃、日本史をもっと勉強したいと思い、大学院に入学しました。

そこで女性史に出会い、月経(生理)に関する史料をたくさん見つけ、興味を持ちました。

――そうだったんですか! どの辺りに特に興味を引かれたのでしょうか?田中ひかるさん:生理は平安時代以来、ずっと公的に不浄視されてきたのです。

それが、明治時代に廃止され、同時に西洋医学が入ってきました。

すると、今度は、西洋医学によって新たに生理が意味づけられ、さらに女性が差別されることになったのです。

――どういうことでしょうか?田中ひかるさん:例えば、女性は生理のときに精神が不安定になるため、責任ある仕事についてはいけないとか、生理のときに頭を使うと将来の妊娠、出産に差し支えるため、勉強をしてはいけないとか。

つまり、生理を根拠に、学業や職業から締め出されたのです。

――なるほど…田中ひかるさん:さらには「生理の時は犯罪を犯しやすい」とか「自殺しやすい」などと言われるようにもなりました。

今も犯罪学の教科書に、同様のことが書いてあります。

それで、「本当のところはどうなの?」と思い、博士論文のテーマに「月経と犯罪(※)」を選び、それをもとに最初の本を書きました。

※『月経と犯罪―女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)――たしかにステレオタイプの表現として女性がイライラしていると「今日生理なんじゃない?」というものがありますね。

年齢を重ねるとそれが“更年期”にとって代わられたりしますが(笑)田中ひかるさん:たしかにそうですね(笑) 「生理=不浄」という日本社会を何百年も生きてきた女性たち ――生理と女性の歴史から、さらに生理用品に興味を持つようになったんですね。

田中ひかるさん:そうですね。

もともと「こんな便利なものを作ってくれたのは誰なんだろう」というところから、アンネナプキンの産みの親の坂井泰子さんを知って、色々調べるようになったんですが、生理用品がこんなに快適になったのはここ数十年の話です。

明治末期から月経帯の商品化が始まって昭和初期には各メーカーが競い合っていましたが、戦争が始まると月経帯とともに使用する“脱脂綿”は軍の使用が優先され、手に入らなくなってしまいます。

脱脂綿の配給制は戦後、1951年まで続きました。

――私は祖母や母親と生理用品について話したことはないのですが、知り合いは母親と生理用品の話をしたことがあるそうで、昔は新聞紙などを柔らかくしてその上にぼろ布を敷いて、しかもその布を何度も洗って使っていた、と聞いたそうです。

『生理用品と社会史』の中にも、そういった体験談を話す高齢女性の話が出てきますが、改めて驚きましたし、どんなに大変だったろうと思います。

田中ひかるさん:本当にそうですね。

生理用品に対する苦労はもちろんですが、昔は生理になると月経小屋に隔離されて、そこで日々を過ごさなければいけなかったり、家族と一緒に家の中でご飯を食べることは禁じられていて、軒下で一人食事をしなければいけなかったりしました。

つまり“誰が生理なのか”ということが、みんなに共有されていたわけです。

しかもそれは“不浄な存在”としてです。

――そのくだりを読んでいる時には本当に胸が苦しくなりました。

しかし同時に日本人女性の根拠のない自尊感情の低さの理由が分かったような気もしました。

何百年もの間、男性からはもちろん子どもたちからも下に見られる存在として生きてきた記憶が染みついたDNAはなかなか手強そうだなと。

田中ひかるさん:今も初経のときに、自己卑下の感情を持ってしまう女の子はいます。

そうならないような初経教育が必要ですね。

ほんの数十年前まで生理の粗相は当たり前だった ――昔は、経血のついた脱脂綿が学校の廊下や道端に落ちていたというのは、本当ですか?田中ひかるさん:本当です。

アンネナプキンの産みの親の坂井さんも、バスの中で経血のついた脱脂綿が転がっているのを見て、何とかしたいと思ったそうです。

ただ、そういう光景が珍しくなかった分、“生理の粗相”に対して寛容な空気があったと思います。

――なるほど…私が小・中学校の頃も今よりも生理用品が良質ではなかったですし、おまけにブルマーの時代でしたので私自身も血がにじんで恥ずかしい思いをしたこともありました。

友だちと「染みてるよ!」って言い合ったりしていましたね。

今では考えられないかもしれませんね。

田中ひかるさん:そうですね。

私の頃も今のような大きいナプキンがなかったので、たてに2枚並べて使っている友達もいました。

――ああ! そうでした。

田中ひかるさん:生理用品の不備もあり、アラフォー世代より上の人たちは、生理にまつわる“恥ずかしい”経験を多少はしたことがあると思います。

その点、今の20代、30代の女性たちは、生理に関して“恥ずかしい”と感じたことは少ないのではないでしょうか。

もちろん個人差もありますが。

それが現在の“生理ムーブメント”につながったのだと思います。

――女性と生理と社会。

女性という生物の現象として起こる“生理”によってあまりにも長い間、女性は虐げられ恥ずかしく辛い思いをしてきました。

その感覚と現実が今、社会的に少しずつ変わりつつあります。

歴史社会学者 田中ひかるさんインタビュー第二回目は生理に対する年齢による意識の差や昨年末話題になった生理バッジについてです。

※2月21日(金)12時公開予定文/和氣 恵子、撮影/鈴木 志江菜 ■田中ひかるさんプロフィール 1970年東京都生まれ。

博士(学術)。

著書に『月経と犯罪―女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)など。

生理用品の社会史(KADOKAWA) ¥ 1056 日本女性の生活を大きく変えた画期的な商品「アンネナプキン」。

その誕生は、ほんの50年ほど前のことである。

女性の社会進出を支えた商品開発の裏には、一人の女性経営者の一筋縄ではいかないドラマがあった―。

植物、絹、脱脂綿、ビクトリヤなど、不便で不快だった古い経血処理の方法から、欧米ほどタンポンの使用が普及しなかった理由まで。

一大ビジネスへと発展した、女性史にとどまらない日本社会の変遷を明らかにする。

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